シルバー鍛造リングができるまでの工程
Coral Rain Valley 制作ノート —
叩いて、焼いて、また叩く。密度が上がるまで繰り返す作業のこと
シルバーのリングを作る方法はいくつかあります。型に流し込む鋳造、板や線材を曲げて溶接する方法、そして金属を叩いて成形する鍛造。工房では主に鍛造を選んでいます。なぜそうするのか、どんな工程を経るのか、順を追って説明します。
鍛造と鋳造、何が違うのか
鋳造は溶かした金属を型に流し込む方法です。複雑な形を短時間で作れる利点がありますが、冷える過程で内部に微細な空洞ができやすく、密度が均一になりにくいことがあります。鍛造は金属を叩いて成形します。叩くたびに内部の結晶が細かくなり、密度が上がります。
手に持ったときの重みの違いは、この密度の差から来ています。同じ体積のシルバーでも、鍛造品の方が充実した感触があります。日常的に使うリングにとって、強度の面でも利点があると考えています。
焼き鈍しを繰り返す理由
金属は叩くと硬くなります。これを加工硬化と言います。硬くなった金属をそのまま叩き続けると、割れることがあります。そこで、ガスバーナーで一定の温度まで加熱し、金属を柔らかく戻す作業が必要です。これが焼き鈍し(やきなまし)です。
焼き鈍しと叩きを交互に繰り返すことで、金属は少しずつ形を変えながら密度を上げていきます。工房でリング一本を仕上げるまでに、この繰り返しを10回以上行うこともあります。時間はかかりますが、この工程を省くことはしません。
鎚目を残すかどうかの判断
叩いた跡は表面に残ります。これを鎚目(つちめ)と言います。鎚目を残すかどうかは、作品ごとに判断します。残す場合は、光の散り方に動きが生まれます。消す場合は、ヤスリと研磨剤で表面を整えていきます。
どちらが良いということはなく、石の種類や形との組み合わせで決めます。ラブラドライトのように石自体が光を動かす場合は、リングの表面を落ち着かせることが多いです。鎚目を残したバングルの例は、サービスのページに載せています。
石をはめ込む工程
石をはめ込む方法にも種類があります。工房でよく使うのはベゼルセッティングです。石の周囲を金属の縁で包む方法で、石が外れにくく、日常使いに向いています。縁の高さと厚みは石のサイズに合わせて調整します。
石をはめ込む前に、石座(いしざ)の内側を石の形に合わせて削ります。石が均一に接触するよう、少しずつ削っては確認する作業です。ここで急ぐと、石が傾いたり、縁を締めたときに割れたりします。
鍛造のリングは、作る側にとっても時間のかかる工程です。でも、完成したものを手に取ったとき、その重みは工程の記録でもあります。工房のなりたちについては、別のページでも書いています。